感音性難聴のお話
■感音性難聴とは
感音性難聴(感音難聴)とは内耳以降の障害によって引き起こる難聴のことです。
音は外耳を通って鼓膜を振動させ中耳へ、鼓膜の振動が耳小骨を介して奥の内耳に伝わります。
音が内耳に伝わると蝸牛と呼ばれる器官の中にあるリンパ液が振動し、蝸牛内にある感覚細胞である有毛細胞を刺激し、その刺激を電気的な信号に変換、神経を介して脳に伝えています。
この内耳以降の音の伝達ができなくなると難聴の症状が現れます。
■感音性難聴の原因
感音性難聴になる原因は主に以下の3点があります。
〈加齢〉
加齢性難聴ともいいます。加齢によって、有毛細胞がダメージを受けたり、その数が減少したり、有毛細胞にある聴毛が抜け落ちたりすることでおきるとされています。
脳自体の認知能力の低下など、内耳以外の要因も複合的に関係するとされます。
一般的に聴力は年齢を重ねるにつれ、高音が聞こえにくくなります。
難聴の程度は個人差がありますが、左右差がなく、高音が低下することが多く、高音には言葉の情報が集まっているため、“音は聞こえるけど、何を言っているのか、わからない”という、言葉の聞き取りが低下することが多いです。
個々のおかれている状況によりますが、補聴器の使用を検討する方もいます。
最近、認知症のリスクに難聴が挙げられ、その予防といった見地から、補聴器の装用が注目を浴びています。
〈内耳の病気〉
感音性難聴の原因となる代表的な病気として突発性難聴やメニエール病があります。
突発性難聴は原因不明、メニエール病は内耳の水ぶくれ(内リンパ水腫)が原因とされています。
感音性難聴、耳鳴、めまいなど症状が似ていますが、突発性難聴は1回のみ、メニエール病は繰り返すという違いがあります。
両方の病気ともストレス、睡眠不足、過労などが深く関わっていると言われています。
どちらの病気も早期発見・早期治療が大切になりますので、もしかしたらと感じたらすぐに受診しましょう。(「突発性難聴」のお話はこちら、「めまい」のお話はこちら)
〈騒音〉
長期間にわたって騒音を聞き続けていた場合、突然大きい音を聞いた場合、内耳に多大なダメージを与えてしまうため、感音性難聴の原因となります。
前者を騒音性難聴といい、高音の4000Hzを中心に徐々に難聴が進行します。
耳栓などの予防、定期的な聴力の検査が大切となります。
後者を急性音響障害(音響外傷)といいます。
日常生活においてはイヤホンを使い大音量で音楽を聞いていたり、仕事場やコンサート会場などで数時間大きい音を聞いたりすると急性音響障害になってしまう可能性が高くなります。
大音量など外的な要因もありますが、寝不足、飲酒、過労など内的な要因も関係するとされています。
急性音響障害の場合は、突発性難聴に準じた治療を早期に行うことが大切です。
■感音性難聴の治療、対処方法
徐々に聞こえが低下してきたなどの慢性的な感音性難聴に対する明確な治療方法はいまだ発見されていません。
しかし、原因を明確にすることによって対処する方法はあります。
加齢が原因の場合、難聴がこれ以上進行しないようにするために定期的な聴力検査が大切になります。
周囲とのコミュニケーションに問題がでてきた場合は、補聴器の装用を検討することも1つの方法です。
ただし補聴器を使用したからといって、すぐに以前と全く同じ状態に聴力が戻るわけではありません。
自身の聴力に合わせて、よく聞こえている高さの音はそのままで、自身の聞き取ることが難しかった高さの音のみを増幅し、耳に沢山入るように、補聴器を作成、さらには根気強く微調整、継続して使用をすることによって、言葉の情報量が増え、脳もその状態に慣れてきて、聞き取りがよくなることが期待できます。
まずはお近くの耳鼻咽喉科で相談しましょう。
内耳の病気が原因の場合、急性期で症状によっては投薬などで改善ができる場合があります。
難聴は発症してから1か月以上経過してしまうと、聴力が元の状態に戻りにくい傾向があります。
1週間から遅くとも10日以内に受診し治療を開始することで改善する可能性が高くなります。
騒音が原因の場合、生活の中で原因となっている音を取り除き、耳を休めることが大切になります。
もし仕事場の騒音が原因であるならば、可能なら耳栓の装用などを検討するといいでしょう。
急性音響障害の場合は早期の受診、治療開始で回復する可能性があります。
■感音性難聴の予防
前述の騒音性難聴の場合は、音の大きさのみではなく、音に暴露された期間も関係してきます。
よって感音性難聴にならないための予防策としては、確実なものはありませんが、若い頃からどれだけ自分の耳のことを気遣い、生活を送ることができるかが大切になります。
具体的な方法としては、
・騒音環境のお仕事の場合は、可能なら耳栓を使用する
・音楽を聞く音量、時間、場所を考え、耳を休ませる時間を作る
・どうしても騒音環境下で音楽を聞くときは、気がついたら周囲の音に合わせて大音量になっていた、などということがないように、密閉型のヘッドホンの使用やノイズキャンセリング機能を活用する
・大音量のコンサートに行く場合は、寝不足や過労が無い状態で飲酒を控える
以上のような行動を心がけることにより、感音性難聴を発症する可能性は減らすことは可能かと思います。
札幌市東区 あべ耳鼻咽喉科アレルギー科クリニック 院長 安部 裕介